イタリアのトスカーナ地方で作られているワインにキャンティがあります。以前に紹介したお腹のぽっこりした瓶に入っていたワインもキャンティワイン。
トスカーナ地方に広く分布しているけど、一箇所だけ「クラシコ」と呼ばれる地域があります。ほかのキャンティワインと区別するため、黒鶏マークがシンボルとしてエチケットに印刷されているもの。
このキャンティクラシコ地区に、ぶどう収穫前の、まだセラーが多忙を極める前に行ってきました。

クラシコ地域では、紀元前からワインを作っていたらしい。出土品が見つかっています。


今日の見学先は、Monteraponi モンテラポーニ。


1000年には村が存在していたという、モンテラポーニセラー。その時代の文献に、モンテラポーニという名前が記載されているらしい。ただ、文献が残る以前から存在したと考えられ、その年、800年とか900年。ざっくり1000年前!


過去があり現在に生き未来に繋がる、自然の時間に、圧倒されるよりは、包み込まれるような温かい優しさ。


色とりどりの緑のグラデーションと、時の風合いをまとった石壁。トスカーナらしい糸杉と彫刻で飾られた庭園。


いまは、一家族の所有物だけど(って、すごいよね)、昔はモンテラポーニ村として、学校、郵便局、教会などがあり、村人が暮らしていた場所。
戦後に過疎化が進み、土地を二束三文で売り払い、街へと移動した時代。いまはこんなに美しいトスカーナ地方も、やはり同じ運命を辿った場所。
土地を買い求めた先見の明のある人たちが、自分たちの先祖だったらよかったのに!とは、よく耳にする、うらめしごと(笑)


イタリアの美しさを体現したような空間には、ワイン造りに必要な道具類が見当たらない。と思ったら、この小さな村の建物内に分散されていた。


小さな扉をくぐり抜けると、そこは醸造室。

大樽での熟成が、トスカーナ地方の伝統的なワインの特徴。

小樽を使うところもあるけど、モンテラポーニでは、大樽が主流。

この樽、姿が美しく見惚れました。フランスはブルゴーニュの樽屋さんで作ってもらった特注とのこと。

一方、とてもシンプルなセメント製のタンク。といっても、内側はガラス樹脂で覆われています。このタンクもトスカーナ地方ではよく用いられる。
木樽と違い、木の香りがつかないために本来の葡萄の味を活かされる。最近、見直されて使うところも増えているよう。

卵型、とっても可愛いんですけど。
葡萄を収穫したのち、アルコール発酵させるためのタンク。発酵中に葡萄の皮が上に浮かんでくるけど、その浮かび方と、皮の下でアルコール発酵する葡萄ジュースの接続面がとても良く、驚くほど美味しくできるそうです。デザインもさることながら、機能性も優れている。 発案した人、すごいです。

いまもむかしも、マイナーチェンジはあるものの、エチケットのデザインは変わらず。

深みと重みがあり、乳酸系のまろやかな舌触りが包み込む、バランスの取れたワイン。完全なる家族経営で営われています。

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