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彫刻と喜怒哀楽(サンタンドレア教会)

前回の続きです。

ファサードもさることながら、
この教会には、内部にある説教壇を見るためにやってきました。
それがこれ。

向かって左側の、彫刻で装飾されているのが目的の説教壇。


DSC03390_20110111233702.jpg


ローマ時代が崩壊し、混沌とした中世時代を迎えたイタリア。
人々が生きるために生きていた時代。
食べることや身を守ることが最重要だった暗黒の時代。

そんな状況から、少しずつ抜け出して、
人々の生活が少しずつ盛り返したとき、
再び目が向けられたのが、芸術。

ひっそりと佇むサンタンドレア教会には、
ピサの洗礼堂の洗礼盤やシエナの大聖堂のデザイン&製作を手掛けた
ジョヴァンニ・ピザーノが作った説教壇が残されています。

そして、説教壇の表面には、新約聖書のストーリーが
まるで空白を恐れるかのように、ぎっしりと、
隙間なく彫られています。


Yokos Blog


ちなみに、お父さんのニコラ・ピザーノは
ピサの大聖堂の説教壇を作っています。

彼らの名前や業績だけを聞いても、

ほ~そうなんだ。
なんとなく、すごそうだけど、なにがすごいの?
え? 誰?

う~ん・・・
なかなかストンと腑に落ちないですよね。

実は彼ら、中世時代に一筋の光を投げかけた
希有な彫刻家なんです。

自称「彫刻家」のミケランジェロが活躍した時代より約300年前。

神、キリスト、マリア、聖人。

新約聖書に登場する人物を、感情の持たない描写、
すなわち、シンボルのような描写で表現することが主流だった時代。
前回も紹介したような、ヘタ上手絵的な感じ ↓


DSC03434.jpg


それを、彼ら親子は、苦しみや悲しみや喜びなどの喜怒哀楽の
人間的な感情を、彫刻で表現した芸術家。 

その時、13世紀。

古代ローマ時代の芸術が忘れ去られてから数百年。
やっと新たに、芸術の第一歩を踏み出した作品の1つです。


東方三博士が幼子キリスト誕生のお祝いにやってくるシーン

DSC03406-1.jpg

後ろ二人の三博士が、顔を見合わせて、にっこりしている優しい表情。



新しい王が生まれたと聞いて、ヘロデ大王が
キリストと同年代の2歳以下の男児を殺害させているシーン

DSC03407-4.jpg

今まさに、兵士が赤ちゃんを母親の手から奪い殺害しようとしているところ。
母親の必死の表情、苦しむ男児、冷徹な兵士。



死後、天国行きと地獄行きに分けられる最後の審判のシーンの一部。

DSC03402.jpg

天使が天国へ行く死者を迎えに来ています
死者が、なんて穏やかな表情をしているんでしょう。


この説教壇は1301年に完成したということです。
1200年代後期は、フィレンツェの大聖堂なども建立した時期。
当時のバブル現象?!

感情に訴えかけた作品は、わたしの心にビンビン響きました。
当時の人々にとっては、もっともっと強烈だったはず。

12世紀の昔も、21世紀の今も、
人間の感情って、同じなんですね。




** アクセス **
フィレンツェからは電車でも行けます。
毎時1本あり、所要時間は片道約40分。切符は約3ユーロ。
あまり知られていない小さな街ピストイア。お勧めです。



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[ 2011/01/12 00:26 ] @イタリアの中世文化 | TB(0) | CM(2)

ピストイア

ああ、そうでしたか、この説教壇のあるとこでしたか・・・(といいつつ、ピサーニ親子の説教壇それぞれ区別して把握しているわけではないけど・・・)

中世好きとしては、ファサードのヘタウマ彫刻にもものすごく惹かれます。
・・・ていうか、やっぱりこれは見たことがない気がします。これもいつか見に行かなくては、ですね。
[ 2011/01/14 01:38 ] [ 編集 ]

Fumieさん Re: ピストイア

ピストイアにはフィレンツェのクーポラに似せた、
なんちゃってクーポラを見にいったことはあっても、
ちょっと外れなために、
サンタンドレア教会にはずっと足を運んでいなかったんです。

> ピサーニ親子の説教壇それぞれ区別して把握しているわけではないけど・・

わたしも わたしも(笑)
今度はピサでじ~っくり親子の作品を見比べてきます。

> 中世好きとしては、ファサードのヘタウマ彫刻にもものすごく惹かれます。

お!?  fumieさんも中世好きですか。 わたしも!!
ヘタウマ彫刻、情緒があって(笑)、いいですよねえ。

> ・・・ていうか、やっぱりこれは見たことがない気がします。これもいつか見に行かなくては、ですね。

フィレンツェにいらしたときに、サクっと電車で行けますよ!
中世好きなら、バルトロメオ教会もお勧めです。
[ 2011/01/15 20:37 ] [ 編集 ]

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